PICK UP PROJECT
ピックアッププロジェクト
医療科学が描く、
交通事故ゼロの社会。
神経リハビリテーション/自動車運転
Neurorehabilitation/Automobile Driving
「神経系リハビリテーション」の研究プロジェクトチームでは、近年社会的関心が高まっている高齢者や障害者の自動車運転に関する研究を進めています。
近年、高齢者や障害者による悲惨な交通事故がたびたび報道され、社会の中では早期の免許返納を促す意見も多く見られます。重大な事故の加害者や被害者になることは、いずれにしても避けなければなりません。一方で、公共交通機関が乏しい地域では、自動車運転は生活を維持するうえで不可欠な手段であり、高齢化や通院の必要性、病気や障害によって運転が困難になることは、生きがいの喪失、閉じこもり、うつ症状、認知症の進行、死亡リスクの増加など、健康への悪影響をもたらすことが報告されています。そのため、自動車運転の継続と安全の両立は、極めて重要な課題といえます。
自動車運転は「認知・判断・操作」の各過程から構成され、ハンドルやアクセル、ブレーキの操作に必要な運動機能に加えて、注意力や記憶力などの認知機能が重要な役割を果たします。加齢や脳損傷などによりこれらの機能が低下すると、運転能力にも影響を及ぼす可能性があります。
このプロジェクトでは、アイトラッキング技術を用いて、交通事故経験のある高齢者の注視行動や危険場面を想定した際の瞳孔径の変化、若年者との視線移動の違いなどを評価・分析しています。さらに、踏み間違い時の下肢筋電図(EMG)を計測し、ペダル操作に関わる筋活動の特徴を解析しています。また、運転中の脳賦活を機能的MRI(fMRI)や近赤外分光法(NIRS)により測定し、注意・判断・操作に関与する脳領域の活動を検討しています。これらの研究を通じて、交通事故と注意力・脳活動との関連や、安全運転に寄与する神経基盤の理解を深めることを目的としています。
最終的には、運転中止の判断基準の明確化や、安全運転を支援するための評価方法、トレーニングプログラム、支援機器の開発へと発展させていくことを目指しています。
“歩く、動かす”の障がいを科学的に分析し、
社会問題の解決に取り組む。
運動科学
Neurorehabilitation
脳・神経・骨関節に生じるさまざまな疾患では、筋肉の麻痺や協調運動の乱れにより、「立つ」「歩く」といった基本的な動作が著しく制限されます。私たちは、このような問題に対して、筋電図や動作解析技術を用いて運動を科学的に分析し、効果的なリハビリテーション法の開発に取り組んでいます。近年では、プログラミング言語を用いた数値解析ソフトウェアやAI技術を駆使して膨大なデータを解析し、複雑な筋制御メカニズムをモデル化することで、運動障害の精密かつ個別化された評価と治療戦略の最適化を実現しています。
こうした独自の解析技術は、医療分野にとどまりません。社会問題となっている自動車の「ブレーキ踏み間違い」事故の要因解析にも応用し、加齢に伴う運動機能の変化が運転操作に及ぼす影響を明らかにしています。また、トップアスリートの分析で培われたスポーツバイオメカニクスの最先端技術も導入しています。3次元動作解析に加え、時系列データから本質的な特徴を抽出する統計的パラメトリックマッピング(SPM)や関数主成分分析(FPCA)を駆使することで、リハビリ運動や日常動作のわずかな変化さえも高精度に捉えることが可能です。
医療・スポーツ・交通という領域の垣根を越え、「ヒトの動き」の本質を探求することで、より安全で豊かな社会の創造に貢献していきます。
音声と数理モデルが映し出す、
脳の未知なる可能性
発話音声分析
Speech Analysis
音声による高度な会話はすべての動物の中で人間だけが可能な、極めて特徴的な事柄です。二足歩行の姿勢により頭が大きくなることが可能になり、他の動物では発達していない大脳新皮質が発達したことにより、人間は音声による会話が可能になって、時間の概念を獲得し、現在から将来の事柄を考えることもできるようになりました。人間の言語処理機能は大脳新皮質の大きな部分を占めていると考えられており、その機能状態が観測可能であれば脳全体の状況を推測することが可能になると期待されています。21世紀の今日、生成系AIなどにより、音声から発話者の感情を分析するようなことが可能になりましたが、これらの音声分析技術は人間の誰かが喜怒哀楽などを判定してラベル付けした音声のデータベースを分析して実現されたもので、原理的にその性能は人間の主観を超えるものではあり得ません。これらに対し、私たちが利用している音声分析手法は、20世紀後半に発展した複雑系の数学を利用したもので、仮説検証型の実験によりその信頼性を向上させてきました。発話者の演技や演出に騙されず、昼食の前後に2つの音声を収録すれば「どちらが昼食の前に録音されたものであるのか?」の問いに対し70%程度の確率で正しく識別することができます。この全く新しい発話音声分析技術には想像を超えた可能性があり、私たちはその可能性を追求しています。
創傷予防に対する
新しいスキンケアの開発・普及を目指す。
創傷予防
Wound Prevention
私はこれまで看護学を主軸において研究をしてきました。自身の大学院で恩師から頂いたテーマ「終末期のがん患者にはなぜ褥瘡ができやすいのか」で組織学の道に踏み入れ、その後、このテーマを突き進めながら現在は「高齢者の皮膚はなぜ脆弱なのか?創傷予防の新しいスキンケア方法はなにか?」というテーマに取り組んでいます。私は褥瘡をはじめとした皮膚に関わる研究を主として研究者人生を歩んできましたが、単に現象を解明するのみではなく、解明した現象をよりよくするための看護技術を開発する研究にも取り組んできました。恩師とともに一緒に創った成果物が、患者様や看護・介護者に使われ、その使ってくれた方の笑顔が多くなり、「楽になった」という言葉を聞いた時に、本当に研究をしてきてよかった!と胸を熱くしました。現象の解明にとどまらず、結果を活かして次のアクションを創りだす研究は、自分だけではなく広く支援を必要とする人々に恩恵をもたらすことができると信じています。これまで培った研究デザインを駆使して、疑問となる現象を解明し、困っている方々の生活を支援する技術を開発し続けていきたいと考えています。研究者としては1人1人の患者様やそのご家族様へは直接ケアすることはできませんが、多くの同じ境遇の方々が笑顔になれるような研究をしていきたいと思っています。「小さな1歩(疑問)が大きな未来を生む。笑顔は人を変える。」
担当教員
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